2.不思議な怪力


 

 養善寺恵秀は俗に「三十五人力」と言われているが、また「倍力」とも称されている。相手がどんな大力者であっても、その2倍以上の力が必ずでるという、不思議な怪力が授かっているのである。

 

 恵秀は身の丈七尺(約210cm)に近く、着物は二反以上を要した。新町4丁目の某家に恵秀の用いた手指(野良仕事や山仕事で腕から手までを保護する、布製の手甲のようなもの)が残っていたが、片手に普通の人の両手が楽に入ったという。また、最近まで城西の豊島家の川端には三尺ほどの大きな岩石が転がっていたが、恵秀が両手で軽々と持ち上げたと伝えられるものである。新町三の町の出端れの通りに同じく三尺程の生石が置かれてあった。これもまた、恵秀が生存中足駄の先で転がして来たものであると伝えられていたが、両石ともいつの間にか片づけられてしまい今は無い。

 

 幼時彼は大町3丁目善勝寺へ小僧にやられた。このころ大町の某骨董屋に馬鹿げて大きく大人も漸く持つような十能(炭や灰を運ぶための小型のスコップ)があった。かねて力自慢の骨董屋の主人は片手でそれを持ちあげながら、まだ子供の恵秀に向って「どうだ小僧、この十能が持ち上がるか?もし持ちあがったら今後は小僧と呼び捨てにせずにお小僧様と呼んでやる」とからかった。恵秀は悔しがって片手でこれを持ちあげようとしたがどうしても上がらない。彼はこのことを如何にも残念な事に思っていた。それが2~3年経つとその大十能に火鉢を乗せて上げ、まるで団扇でも扇ぐように何べんとなく煽いだので、これには力自慢の骨董屋の主人もその怪力に舌を巻いて驚いたという。

 

 

大力和尚恵秀にあやかり境内にある恵秀の墓へ三度お参りすると、三十五人力のご利益があります

 

令和2年3月16日(月)掲載

続く・・・