9.福島の寺に夜咄しに行く


 恵秀は時折、福島の某寺に夜咄し方々碁打ちに出かけたのは有名な話である。夕方少し早めに晩飯を喫して、その夜に福島に到着する。そして用をすましてから翌朝までには米沢に戻ってくるのが常であった。大力に加えるに軽捷無類、まるで汽車が走るようで飛ぶが如しと言おうか、胴にあてがった傘は歩行の速度の為そのまま吸いつけられて地べたに落ちなかったと言われる。

 また、ある時会津へいった帰る途中、大塩峠辺りで一人の小男と出会った。恵秀が道を急げば、その小男も急ぐ。何処までも付いてくる。恵秀が飛ぶような速さに付き得る者は滅多に有る筈がない。とうとう少しも遅れずに米沢の城南5丁目あたりまで一緒についてきた。そして一方は城南2丁目方面へ、一方は本町2丁目方面へ分かれて行った。

 

 その翌朝昨日の小男が養善寺を訪れて昨日は大変お世話になりました。私は川合小路の何某というものでございます。と挨拶をして帰っていった。恵秀は不思議な思いをして後に川合小路へ行って探してみたが左様な小男は何処にも見出す事が出来なかった。大方これも老狸の仕業であったのだろう。

 

大力和尚恵秀にあやかり境内にある恵秀の墓へ三度お参りすると、三十五人力のご利益があります。